最近、会社のトイレのカギの調子が悪い

会社のトイレのカギの調子が悪いらしく、きちんと施錠することができない。安心してトイレに入っていられないため、片手でトイレの内側からトビラを抑えて入ることになるのだが、それでも他の誰かがトイレに入ってくる物音が聞こえてくると、否が応でも緊張感が高まってしまい余計にトイレの時間が長くなってしまう。これでは仕事にも支障が出てしまうので、なんとか修理してくれと訴えたのだが、余計なことはいいからしっかり仕事しろと怒られてしまった。部長の機嫌が悪いときにそんな話をするからだと、ため息交じりに同僚からは諭されたが、まてまてトイレのカギはなににも代えがたい重要問題じゃないか。これからそれを証明してみせようと思う。

問題。たいていの人間には「他人には絶対に見られたくない瞬間」というものが存在するが、それはなんでしょう。
答え。トイレ。
人間には三大欲求というものがあって、それぞれが理性では抗いがたい力を秘めているといいます。確かに食欲も睡眠欲も性欲も、人の行動の根本にあると言えるでしょう。しかし、それにも増して人が抗えない欲求があります。それはトイレです。どんなにお腹が減っていても、トイレを我慢することはできません。どんなに眠くても、トイレに行ってから寝るはずです。どんなにセクシーな美女が誘ってくれていても、そのときその男がどうしてもトイレに行きたかったなら、なによりまずはトイレに行ってから、ということになるでしょう。

これは全て、人前でトイレをするところを見られたくないということに由来しています。もしも「トイレ内の所業」を誰に見られても良いという人間ばかりだったなら、食べながら、寝ながら、いたしながらトイレをすることでしょう。しかし、それは一般人には決して耐えられない恥辱となります。それほどまでにトイレ内の所業を見られたくないという欲求は強いのです。
だから会社のトイレのカギを早く修理してください。